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2007年1月31日 (水)

2007・1 読書記録。

「愛死」(瀬戸内寂聴)

エイズという病、やがて訪れる確実な死よりも、今生きている命の瞬間の輝きを信じようとする人たち…。血友病の治療で感染した人、性交渉の結果感染した人、、過程は様々だったけれど、それぞれに対し思うところがあった。「自分が辛い想いをしたことのない人間は、他人の不幸に鈍感なのよ。悲しいめや辛い想いはしたくないけど、自分が苦しんで流した涙の量だけ、人間誰だってやさしくなれるんじゃないかしら」という言葉、その通りと思った。…リアルなところでは、潜伏期間の長さに改めて驚いた。

「天国までの百マイル」(浅田次郎)

バブル崩壊で会社も金も失い、妻子とも別れたろくでなしの中年男が、心臓病を患う母の命を救うため、天才的な心臓外科医がいるという病院めざし、奇跡を信じて百マイルをひたすらに駆ける・・・。久々に随所で泣かされた1冊。母子の愛情だけでなく、男女の愛情も平行して描かれているんだけど、どちらも本当に感動的だった。エゴに溢れた人たちもいる中、自分のことよりも他の人のことを愛せる優しい人がいっぱいで、胸がいっぱいになった。特にマリの生き方、すごいと思った。普通はこんなに強く優しい女にはなかなかなれないだろうね。。

「13階段」(高野和明)

犯行時刻の記憶を失った死刑囚、その冤罪を晴らすべく、刑務官・南郷は前科を背負った青年・三上と共に調査を始める・・・。噂には聞いていたが、なるほど面白かった。謎解き物としても、人間模様的にも興味深い。自分が殺した男の遺影を前にした時の「心は空白になった。自分が何を考え、何を感じるべきなのかは分からなくなった。これまで心の中で繰り返してきた自己憐憫や正当化、さらには運命というものへの諦観はすべて消え去り、なす術もない空白に、ただ狼狽するばかりだった」という描写、巧いと思う。そして独居房でいつか来る死刑の日を待つ(正確には待っていないと思うが)死刑囚の描写に、怖くなった。毎日「今日ではなかった」と束の間の安堵、そしてまたすぐに「明日なのか」と怯える、そんな繰り返し、とても耐えられない。死刑囚でなくても、同じだ。私は、真綿でじわじわと首を絞められるようなのは嫌だよ。長く苦しいのは嫌だよ。ひと思いにバッサリ斬られたい。っていうか本当は死にたくない・・・誰でもそうか。

「涙」㊤㊦(乃南アサ)

刑事である婚約者・勝が突如謎の失踪、殺人事件の容疑者となっていることも判明するが、真実を知るため萄子は一人で彼の行方を追う・・・。 心理描写を得意とする乃南アサらしさが随所に溢れる作品で、スピード感もあった。勝が失踪した背景にどんな複雑な事情が隠されているのか気になって、一気に読んでしまった。真実を知るまでは他の道は見えない、という萄子の割り切れない気持ち分かるし。それだけにラストは、若干物足りないというか、ええ~~??と思ってしまった。どう考えても、勝の行動は過ちで、そのためにどれだけの人が苦しんだことか。。私は悔しい。

「不信のとき」㊤㊦(有吉佐和子)

大手商社に勤める浅井義雄は結婚して15年、銀座のホステス・マチ子の、妻にはない淑やかさに惹かれて行くが・・・。 ドラマ化もされてる作品だしとりあえず読んでみようと思ったんだけど、、これは読む必要なかった、というかちょっと読まなきゃよかったと思った。男の弱さ(ずるさ)、女の強さ(したたかさ?)を、イヤな形で見た気がする。しかし1箇所、浅井の心理状態に関するあまりに的確な分析が、皮肉なほどリアルに分かるところがあった。あえてここに抜粋はしないが、そこはナルホドだった。

「解夏」(さだまさし)

視力を徐々に失っていく病におかされ、職を辞し故郷・長崎に帰った隆之、そこへ東京に残した恋人の陽子がやってくる・・・。最近ワイドショーを通してその名を広く知られるようになったベーチェット病だが、これはもし自分が宣告されたら、、と思うと1番ツラい病気の1つだと思う。徐々に視力を奪われる、、考えただけで怖ろしい、悲しい。2人がお寺で会った老人の「失明した瞬間にその恐怖からは解放される。その日があなたの解夏です」という言葉は、切なく、でも温かくあった。目の話に限らない、人は何かを持っている限り、永遠に「失う」ことの恐怖に付きまとわれる。それは苦しいことだけれど、「失うことが怖い」ものがあるだけ幸せなのかもしれない。そんなことを思った。 この本には他に『秋桜』『水底の村』『サクラサク』の3話が収録されていたが、どの話もそれぞれによかった、思うところがあった。人間っていいな、諦めなければ心はいつか通じる。。『秋桜』、「恋愛は良いとこばっか見せてするもんだが、結婚は悪いとこばっか見せるようなもんだ。恋愛ではなく、結婚をしてくれ」というようなセリフ、いいと思った。っていうか、さだまさし、すごいね。『精霊流し』も今後是非読んでみたい。

「散るぞ悲しき―硫黄島総指揮官・栗林忠道」(梯久美子)

水涸れ弾尽きる凄惨な戦場と化した本土防衛の最前線・硫黄島、その絶海の孤島からの手紙、死よりも苦しい生を生きた烈々たる記録・・・。先日映画「硫黄島からの手紙」を観たばかりだったし、リアルに入り込んでしまった。映画を観ていたから本が分かりやすかったし、本を読んだことで映画では伝わりきれてなかったことが分かった。食べ物どころか水すらない、あまりに苛酷な戦場の様を思って苦しくなった。皆、自分のことだけを思ったら、長く苦しむよりもいっそひと思いに楽になりたかったと思う。でも本土に住む愛する者たちを守るため、勝ち目のない闘いを長引かせることだけに命を懸けた男たちの強さ、優しさに胸がイッパイになった。私も、守るべきもののために強く優しくありたい。硫黄島はじめ戦場で命を落とした人たちは、遠くから思い、見守るだけしか出来なかった。でも私は、傍で守りたい。だから何度でも思う、当たり前のことを思う。二度とこんな悲しい戦争をしてはいけない。平和を失ってはいけない。愛する人が無事生きていてくれる、それだけのことがどれだけありがたく幸せなことか、改めて心に刻んだ。 ・・・ちょっと話が逸れたかな。栗林忠道、人間として本当に魅力的な人だった。家族はもちろん、自分を取り巻く全てのものに対して真摯な態度で接する姿が印象に残った。家族に宛てた手紙と同じくらい、いやもしかしたらそれ以上に、彼の訣別電報が心に残った。時代に正々堂々と立ち向かった人間の姿の大きさを思った。読み終えて最後にもう1度「散るぞ悲しき」というタイトルを眺めた時、改めて涙が溢れた。

「恋人よ」㊤㊦(野沢尚)

お腹の子供の父親は自分ではないかもと告げられた男、夫となる男を愛しきれぬまま結婚式を挙げようとする愛永、2人の男女はそれぞれの結婚式の直前に運命的に出会う・・・。 正直、途中で飽き飽きしてた。現実離れしたチープなラブストーリーだと、不愉快ですらあった。でも最後、愛永の最期にはちょっと泣けた。「後悔はありませんか。私にはありません。素晴らしい人生でした。」・・・私も、胸を張って、笑顔でこう言って死にたい。

「草原の椅子」㊤㊦(宮本輝)

長年連れ添った妻と離婚し、50歳になった遠間憲太郎、さらに満たされぬ人生への思いを募らせ、人間としての使命を自らに問う・・・。 宮本輝、初挑戦。なかなか面白い。遠間の親友となる富樫という男、大阪人の経営者なのだが、彼の台詞がいろいろ心に残ったので、書き留めておく。「人情のかけらもないものは、どんなに理屈が通ってても正義やおまへん」、「ひとつのことが、ちゃんとできるやつは、ほかのことも、ちゃんとできるんや。つまり、その逆のケースは、ほとんどないっちゅうことや。ひとつのことができんやつは、ほかのことをさせても、結局、あかんちゅう場合が多い」、「困ったことが起こって、思案にあぐねると、とにかくさっさと布団にもぐり込んで寝てしまいよる。よう寝て、元気を取り戻して目が醒めたら、またええ考えも浮かぶやろ。それまでは、あれこれ思い悩んで考え込んでみても、らちがあかんちゅうのが、俺の親父の持論や」、「俺の親父は、どんなときでも『安心しとれや』っちゅうのが口癖やった。大怪我をして、もう二度と仕事はでけへんのやないかとしか思えんときでも、『もうじき元気になって、働けるようになるから、お前ら、安心しとれや』って言うとった。そういう心意気が、親父の脚を動くようにさせて、親父の仕事に新しい道をひらかせたんや」、、全部、いい。まず眠ること、大事だと思う。でも眠るためには、嘘でも安心が必要。。「安心しとれや」、その言葉だけで、全てがうまく行くようになる気がする。 下巻もなかなか考えさせられる人間模様だった。そしてやっぱり、ところどころすごく心に残る。「解決できない問題なんて、この世にない。強気で行こうぜ。強気と、無計画で無謀だってこととは根本的に違うさ。強気ってのは精神の構え方であり、楽天的であろうとする心でもあるんだ。強気で時を待つっていうこともある。弱気で生きるのも一生。強気で生きるのも一生。同じ一生なら、強気のほうが、思い残すことがない。おい、笑えよ。お日さんの当たってないところには花は咲かないぜ。暗くて、じめじめしてるところには、げじげじなんかが生まれるし、黴もはびこる。人生もおんなじだよ」、「俺には、自分の心がよくわからない。むやみに陽気なときもあれば、わけもなく陰気なときもある。志が高い日と低い日があり、寛容なときと狭量なときとがあり、短気な日と、少々のことでは心が乱れない日がある。百円をけちる日があり、つまらないことに十万円を使ってしまう日もある。天下国家を憂いながら、満員電車で脚を踏まれて逆上したりする。五十歳になっても、このありさまなのだ。五歳の子の心が、ちょっとした縁に影響を受けて揺れ動いたとて、何の不思議があろう」、、まったくだ。1番ナルホドだったのは「ゴムホースの原理」。「人間の心に綺麗な”水”を注ぎ続けたら、心のゴミが押し出されるようになる。そのゴミが流れ出している状態は、一見奇異に見えるかもしれないが、それをゴミだと見破って、全部が流れ出るまで恐れずに水を注ぎ続けなければならない。全てのゴミが流れ出てしまったら、後は綺麗な水が流れるばかりになる」、そんな原理。そしてこれは、人生全般に通ずることだという。何か災いが起こった時も「自分の中の汚いゴミが今出てるんだ」と思って辛抱すること、自分を浄化する水を注ぎ続けることが肝要だと。・・・なるほどね。

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2007・1映画鑑賞記録。

「手紙」

去年試写会で観てたので2回目だったんだけど、前観た時より今日の方がよかった(前回は、沢尻さんが浮いてることがひたすら気になってしょーがなかったので)。またラストで大泣き。お兄ちゃん(=玉山鉄二)最高すぎる。。山田君もいいんだけど、やっぱお兄ちゃんのあの芝居に勝るものはなし。主題歌も雰囲気ピッタリで大好き。

「硫黄島からの手紙」

・・・重くて長い時間だった。本当に本当に当たり前のことだけど、戦争なんか絶対二度としたらダメや、と改めて強く思った。人間は皆1人1人が、自分自身の意思を持って、自分の心の正しいと信ずるところに従って、生きなければいけない。。

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